セルフスタンドの増加などを背景に、レギュラーガソリンの軽自動車に軽油を入れるといった、油種の間違いが多発しています。一方、セルフではないガソリンスタンドのスタッフが間違えるケースもあるようです。

「軽自動車=軽油」だけではない「思い込み」

 近年、ガソリンの入れ間違いが多発しています。JAF(日本自動車連盟)によると、その申し出のあった救援件数は、2018年12月の1か月間において全国で390件。JAFでは不定期に、このような油種間違いにまつわる救援件数を調査していますが、たとえば2015年の同期間は269件でした。


適正油種を間違えて給油するケースが多発している。写真はイメージ(画像:Andrey Kekyalyaynen/123RF)。

 JAFではドライバーの申告に基づく油種間違いの要因として「(レンタカーや会社のクルマなど)普段乗らないクルマだった」「うっかりしていた」といった理由を挙げており、ユーザーが自身で油種を選択して給油するセルフ式ガソリンスタンドの増加などが背景にあるとしています。また過去のJAF調査では、油種間違いの半数近くが、セルフスタンドにおいて「ガソリン車に軽油」を入れる事例だったという結果も。特に「軽自動車は軽油」と思い込んでいたドライバーが少なくないそうです。

「軽」という言葉から「軽自動車=軽油」と連想するドライバーが一定数いるようですが、油種間違いは必ずしも、知識のないドライバーのあいだだけで起こっているわけではありません。埼玉県内のあるレンタカー事業者は、次のように話します。

「『軽自動車だから軽油』だけでなく、『貨物車だから軽油』との思い込みによる油種間違いも、おもにバンタイプの貨物車で発生しています。レギュラーガソリンを使うバンに、軽油を入れてしまうケースです。トラックなどは軽油を使うディーゼル車がほとんどですが、商用バンにおいては現在、レギュラーガソリンクルマが増えています」(レンタカー事業者)

 つまり、「貨物車はディーゼル」という、ある程度の知識を持つドライバーが思い込みで油種を間違えてしまうケースがあるわけです。

レンタカーで油種を間違えるとどうなる?

 同レンタカー事業者によると、レンタカーで誤った油種を入れてしまった場合、それによる故障の修理費は保険の補償範囲を超えない限りユーザーに請求されないものの、そのあいだの休業補償(ノンオペレーションチャージ)は発生するとのこと。ドライバーが給油時の間違いに気づかず、返却予定の店舗まで戻って来れた場合でも、「給油の領収書(レシート)を確認させていただくことが基本ですので、そこで油種間違いが発覚するケースがあります」といいます。

 同社ではこうした間違いを防止するため、おもに貨物車では給油口の蓋の表側に、乗用車では内側に、そのクルマの指定油種を記したステッカーを掲出。2017年ごろからそのような対策を始め、最近では油種間違いの件数は減ってきているといいます。

 もっとも、同社も油種間違いが増えている要因は、セルフスタンドの増加が大きいといいますが、セルフではないガソリンスタンドでも、油種の間違いが起こっています。

 輸入車の業界団体である日本自動車輸入組合(東京都港区)が、欧州車を中心に近年増えている「クリーンディーゼル車」における油種間違いについて、注意を呼び掛けています。クリーンディーゼル車は軽油を使用しますが、同組合によると、「ガソリンスタンドのスタッフが『輸入車の使用燃料は無鉛プレミアム(ハイオク)ガソリン』だと思い込んで誤給油する事例が発生しております」とのこと。油種を指定して依頼してほしいといいます。


輸入車は給油口付近に適正油種が表示されていることも(画像:日本自動車輸入組合)。

「クリーンディーゼル車は、車体のモデル名表示に『D』などと書かれている場合もありますが、ガソリン車との違いが見た目からわからないケースが多いです。そこで当組合の会員企業(自動車メーカーなど)の車種では、給油口に適正油種を表示したり、給油キャップの色を変えたりしています」(日本自動車輸入組合)

 ちなみに、JAFは誤給油を防ぐポイントとして、セルフスタンドの給油ノズルカバーが「レギュラーガソリン=赤」「ハイオクガソリン=黄」「軽油=緑」と決められていることを挙げ、「燃料の種類と給油ノズルの色を確認してほしい」としています。

【写真】セルフの給油機、油種はノズルの「色」で区別


レギュラーは赤、ハイオクは黄、軽油は緑とノズルカバーの色が決められている(画像:photolibrary)。